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3人の旅人が再会するのは、1年で一番長い夜が始まったばかりの頃でした。

最初の旅人は山々に囲まれ、神秘的な洞窟があちこちにある南からやって来ました。2番目の旅人は、奇妙な宝物が隠されている海のある
西からやって来ました。そして3番目の旅人は、雲に届くほど高いモミの木の森がある東からやって来ました。

踊る精神
西の伝説

西の海の奥底
には、
不思議な生き物が
いると言われています。
この生き物は、夜が明けるまで
毎晩海の水を揺り動かしていました。
船乗りたちは船が転覆するのを恐れ、
日が暮れると、決して船を出すことは
ありませんでした。

ひとりの漁師が最愛の人への贈り物
を探すために、朝早くに隣の島の方
に舟で向いました。

冬の深い霧に驚き、とうとう漁師は
沖でどこにいるのは分からなくなっ
てしまいました。

。海の底から鈍い音
がするのを聞いたときには、もう日
が沈んでいました。突然、舟は次第
に高まる波に飲み込まれました。
漁師は気が動転し、頬には涙がつた
い出し、海の生き物が海の底に自
分を連れて行かないようにと祈るば
かりでした。海に落ちた甘い涙を感
じて、海の生き物が水面から顔を出
しました。すると海は静けさを取り
戻したのです。漁師は、セイレーン
と向き合っているのに気が付きまし
た。セイレーンの巨大な頭には、真
珠の付いた無数の髪の毛が垂れ下が
り、そこからアンバーの繊細で心地
よい香りが漂ってきました。
漁師はビックリ仰天し、我を忘れて
しまいました。海の精霊は、漁師が
ここで何をしているのか穏やかに尋
ねました。漁師は、自分の身に起こ
った災難について話し、セイレーン
の慈悲深い様子に安堵しながら、ど
うして海をあんなに大きく揺らすの
かを尋ねました。セイレーンは笑いながら、星や月灯
りの下で、単にダンスをしたかった
こと、星や月の反射と夜の輝きが自
分を酔わせることを漁師に話しまし
た。セイレーンは、自分のダンスが
周囲の港を脅かしていることを知る
由もありませんでした。これからは
もっと気を付けることを漁師に約束
しました。お詫びのしるしに、セイ
レーンは、真珠がたくさんついてい
る一本の髪の毛を漁師に差し出す
と、息をふ~っとひと吹きして漁師
を村の港まで返しました。こうして
運のいい漁師は最愛の人に真珠のつ
いた髪の毛を贈り、それから村人た
ちに自分の冒険を話して聞かせま
した。

この夜以来、西の海は、あんなに激
しく揺れ動く
ことはなくな
りました。セイレ
ーンに感謝を表すため
に、毎年この夜を記念して港の住
人たちは、今でもなお水面にキャン
ドルを浮かべています。こうして水
面にいっそう多くの輝きを与えてい
るのです。

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飽くなき精神
南の伝説

南の山々に
は、洞窟の中に
住んでいる
精霊がいると言われてい
ます。隣村の住人たちによれば、
この精霊は、魔法の鐘を使って、自
分が望むものをなんでも美味しい食
べ物に変える力を持っているそうで
す。

夜のとばりが下りる頃、鐘が鳴
るのがよく聞こえてきました。
大食いの精霊の餌食になるのを恐
れ、誰も洞窟に近づこうとはしませ
んでした。

なによりも長く厳しい冬の間は、食べ物が足りなくなりました。

そこで
村のひとりの女が、お腹が空いてグ
ーグー言うのにいたたまれなくな
り、危険を冒してでも食べ物を分け
て貰うために 、精霊に会いに行くこ
とにしました。女は、鐘の音のする
方に向って歩き、やがて洞窟の入り
口にたどり着きました。洞窟から
アーモンドの美味しそうな匂いが漂っ
てきました。
女は震える声で精霊を呼びました。
それからちょっとたって、丸い頭を
した全身毛むくじゃらの熊が、月の
光に映し出されました。この勇敢な
女は自分のことを食べないでと精霊
に懇願しました。精霊はびっくりし
た様子で、食べるつもりはないと応
えました。というもの精霊が食べる
ものと言えば、鐘を使ってアーモン
ドペーストに姿を変えた洞窟の岩や
砂利だけだったのです。精霊は女を
洞窟の中に招き入れました。
洞窟の中は、暖かく、キャンドルが
たくさんあり、そして色とりどりの
アーモンドペーストでできたさまざ
まな物で飾られていました。
精霊は女に、アーモンドペーストで
作られたお菓子を差し出し、女はす
ぐさまそれを食べ始めました。食べな
がら、村で精霊がひどく恐れられてい
ること、飢饉で食べ物がないので精霊
に食べ物を分けてもらいに来たことを
話しました。精霊は人間たちに誤解さ
れていることをひどく悲しみ、この女
の大変な状態を知り、石をアーモンド
クッキーに変えることができるように
と、自分の魔法の鐘を女に貸すことに
したのです。びっくりするやら嬉しい
やらで、女は精霊にお礼を言って、冬
が終わったら鐘を精霊に必ず返すこと
を約束しました。

こうして女は
村人たちを助け
たのです。それか
ら毎年、鐘を借りた日
を記念して、アーモンドペースト
でいくつも鐘を作り、祝宴の際に、
キャンドルのほのかな灯りの下でア
ーモンドペーストの鐘を食べること
で、村人たちは慈悲深い精霊を称え
たのでした。

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輝く精神
東の伝説

東の一番高い
ところには、
モミの木の森が
ありました。危険を
冒して、わざわざそこに行く者は
いないと言われていました。
毎晩、モミの木の森では風が唸り声
をあげ、木々の間から光が漏れて来
るのを村人たちは知っていました。
それが悪さをする精霊の仕業である
ことを恐れ、村人たちは日が暮れた
らモミの木の森には絶対近寄らない
ことに決めていました。

ある冬の朝のことです。木こりの男
が木を切りにモミの木の森に向いま
した。一本の木を切ったあと、木こ
りは、火の近くに腰を下ろしました。
一休みするために火を焚いたばかり
だったのです。

木こりは、疲れ果て、そこで眠り込
んでしまいました。

木こりが目覚め
たときには、既に日が暮れ辺りは真
っ暗でした。暗闇の中を手探りで、
木こりは帰り道を探しました。する
と突然、目の前に光り輝いている木
が現れたのです。木こりは怖くなっ
て、肩越しにこの木を見ながら、一
目散に逃げ出しました。次々に木々
に光が灯るのが見えました。しかも
この光は、木こりの方にだんだん近
づいてきます。狂ったように逃げて
へとへとになった木こりは雪の中に
倒れてしまいました。するとちょう
ど木こりの前の木が輝き出し、モミ
の木の匂いがしてきたのです。
そしてなんとこの木の後ろから風変
わりな声がするではないですか。「
おい、追いつくのに骨が折れたぞ。そ
んなに速く走りおって」。 そう言うと、
笑顔を浮かべた鹿頭の精霊が、和
やか光を浴びながら姿を現しました。
鹿頭の精霊は木こりが森の中で道に迷
ったに違いないと思い、木こりを助け
たいと思っていたのです。
木こりは鹿頭の精霊を怖がったこと
を謝り、村人たちが話しているモミ
の木の森のことを教えました。それ
から鹿頭の精霊は、木々を全部輝か
せれば、一年のうちのこの時期、長
い間続く暗闇を裏切ることになって
しまうと話しました。木こりが立ち
去る前に、鹿頭の精霊は、村に戻る
には、木々の点々とした灯りを辿っ
ていけばいいと言いました。木こり
は、精霊にお礼を言って、自分のモ
ミの木を拾い集めると、教えて貰っ
た通りに歩き出しました。木々が左右に分か
れ、道ができ
るように感じま
した。

家に戻った木こりは木を切って
薪にする代わりに、モミの木にたく
さんのキャンドルを吊るしました。
こうして木こりは鹿頭の精霊に感謝
を表すとともに、夜の暗闇を退けた
というわけです。

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3人の旅人は北の一年中雪に囲まれた国での再会を約束していました。それはある秘密を見つけるためでした。

この秘密は、古くからの神秘的な儀式を完璧に行なったときにだけ解き明かされると言われていました。3人の旅人は、秘密を知りたいという同じ想いで結ばれ、極地の神秘を解き明かすことができる魔法の知恵を授かるために一度ならず冒険をしていたのです。闇夜に、3人は輪になって、一人ずつ足元に置いた1本のキャンドルに火をつけました。

あたりは、シーンと静まり返っています。

こうして儀式が始まりました。

西の旅人が100年物の真珠の上に注ぐ海の水が入ったガラスの小瓶を取ったとき、鐘の明るい音色はまだ空中に漂っていました。今度は西の旅人がキャンドルに放り投げ、こんな歌を歌い始めました。
ああ、海のセイレーンよ、
地球の西の果てで、
月明かりの夜にしか姿を
見せやしないとしても、
霧の中では私を守りたまえ。
真珠の髪でリズムをとって踊りたまえ。
永遠のアンバーを香らせたまえ。
けれども黄金の光が現れるより早く、
北の伝説を私に解き明かしたまえ。
南から来た旅人の女は、片手にアーモンドペーストを、もう片方の手にはガラスと金で出来た大きな鐘を握っていました。旅人の女が一番初めに、キャンドルの炎の中に投げ、煙の渦巻きの中で鐘に語り掛け、次の詩を唱えました。
おお、南の山の偉大な熊よ、
洞窟と孤独を捨て、
鐘の音の方へ近づいて行き、
美味しい贈り物を見たまえ。
そして美味しいアーモンドペーストを
食べたまえ。
香りよい味わいがお前の舌を
喜ばせるだろう。
朝日の薄明りより先に、
北の伝説を私に解き明かしたまえ。
歌が最後のメロディーにさしかかったときに、東の旅人は、炎の中にモミの葉を投げ入れ、踊りながら次の呪文を唱えました。
おお、鹿頭の精霊よ、
東の緑濃き森で、
こんなにも薄暗い夜には
木々を照らし、闇を遠ざけたまえ。
モミの葉の棘の絨毯の上を
私の行く道を照らしたまえ。
そしてこの呪文で、
北の伝説を私に解き明かしたまえ。
最後の行を言い終わらないうちに、キャンドルは、巨大なおきびへと変わり、たちまち名前を呼ばれた精霊たちが青白い光の姿で現れました。
南の熊の精霊が、秘密は夜が明ける前の最後の暗がりに明らかになると言いました。西のセイレーンは、この秘密は夜明け前にいかなる願いをも叶えることができる千年前から存在する物だと3人に告げました。
東の鹿頭の精霊はそれがどこにあるかを正確に教えました。
精霊たちが告げたように、夜が明ける数分前に、3人は真っ白な
雪の中にきらきらと強い光を放つものを見ました。
雪の中からその輝いているものを拾うと、現れたのは金色をした
大きな羅針盤でした。息を凝らし、旅人たちは千年前の羅針盤に
ともに手を伸ばしました。後は朝日が昇る前に
願い事さえすればいいということを3人はよく分かっていました。

コレクション

フレグランスキャンドル Amande Exquise(ボム ダンブル)
70g / 190g

ベンジョワン, ラベンダー エッセンス, ヴァニラ
フレグランスキャンドル Baume d’Ambre(アマンド エクスキーズ)
70g / 190g

ビターアーモンド エッセンス, ヘリオトロープ, トンカ豆
フレグランスキャンドル Sapin de Lumière
(サパン ドゥ リュミエール)
70g / 190g

シベリアモミ, カナダバルサム, シダ
スペシャルエディション ガーデン
キャンドル インドア&アウトドア用 -
Feu de Bois(フド ブワ)1.5kg。
陶磁器工房 Virebent(ヴィルバン)
で作られた陶器の容器入りの
キャンドル。容器は手作業により
ゴールドに仕上げられたもの。
アドベントカレンダー
クリスマスまで毎日ひとつずつ体験するdiptyque の
小さな宝物25アイテム。diptyqueのカレンダーは、クリスマスまでの毎日を
お祭り気分で過ごせるように、ディスカバリーサイズでメゾンの代表的な
アイテムを揃えています。
カルーセル
まるで魔法を見ているような
オブジェ。炎が発する熱でカルーセルが回転します。
フレグランスキャンドル 190g 用。
フレグランスキャンドル&
ルームスプレー コフレ
このコレクションのアイコニックな
フレグランス Sapin de Lumiere
(サパン ドゥ リュミエール)

待望のウインターコレクション2018年版のために、diptyqueは長年のパートナー Pierre Marie(ピエール・マリー)と、再び手を取り合っています。

1982年生まれの Pierre Marie(ピエール・マリー)は、パリ在住のイラストレーターです。彼は独自の世界を展開しながら、主に、モードや装飾の分野の仕事をしています。なによりも2008年以来エルメスのスカーフ「カレ」の仕事で知られています。彼の作品では必ず物語と装飾が一体化しています。またそれらを構成しているイメージのあふれんばかりの一風変わった趣きと、装飾芸術の最も純粋な伝統に属しているという意志によってモチーフを練り上げて行く手法の点で一線を画しています。 Pierre Marie(ピエール・マリー)は、以前、2010年と2016年のウインターコレクションにおいて、diptyqueとコラボレーションしており、また定期的にメゾンのフレグランスのためのイラストを制作しています。
彼は、ふだんは自然や民話、アニメーション映画からインスピレーションを汲み取っていますが、彼が特に愛情を注ぐメゾンdiptyqueの歴史そのものもまた、彼にとっては果てしない遊びを展開する場になっています。
今年、diptyque と Pierre Marie(ピエール・マリー)は想像上の民話のエスプリ(精霊)を演出しながら冬の伝説を創作しています。それはAhmed Terbaoui(アメッド・テルバウイ)の協力を得て語られる素晴らしい物語であり、魔法の力を秘めたdiptyqueのキャンドルによって表現されています。それぞれのキャンドルは、そのデザインと香りによって、伝説のエスプリ(精霊)を表し、祈りの儀式の際に明らかになる秘密を持っているのです…。

北の伝説: text by Ahmed Terbaoui (アメッド・テルバウイ)、drawing by Pierre Marie (ピエール・マリー)